次の事例は、八十代の母親との同居のケースでした。結局、その設計は中止になりましたが、その家族にとってのリビングは、訪問するお客様に母親を見られないように、という考えに基づいていました。つまり、自分たち家族も、母親となるべく会わない生活動線を望んでいました。この母親は、仮にこの家が完成し同居が実現した時、どのように感じるのでしょうか。寂しい結末しか見えてきません。自分が家族から遠ざけられている、または、受け入れられていないと感じたお年寄りは、積極的に家族の団らんには加わらなくなるでしょう。
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この状況は、お年寄りを自室へ追いやる結果に当然なってしまいます。老人の自殺は、健康に関することが原因になることが多いのですが、同属した家族内での孤独が、自殺の引き金になってしまうことも多く、現代の老人室の位置とその間取りがそれを物語っています。家族関係とはすなわち人間関係ですから、たとえ親子でももつれた糸はなかなか元どおりにはなりませんが、それをいつも自然に解消できるのは、同じものを食べ、同じ空間を共有しているからなのでしょう。部屋の配置次第で絆は強くも弱くもなるのです。
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